3月

3月も全然読めなかったなあと振り返っていたら4月も半ばに差し掛かっていることに気付き愕然。
わたし、タイムリープ、してる。
それなりに慌しく、それなりに体調が悪く、つまりは通常営業ってわけでして。

傀儡后を読んだからカエアンの聖衣新訳を早く読みたいな。嗚呼皮膚小説。わたしはわたしのために着飾りそして戦うのだ。しかしラファティが面白くて面白くて面白くて。なのになかなか読み進められずもやもやとしている。積み本の高さが増していく日々よ。
最近はといえば、ファッセタズムのとってもおかわいいブルゾンを買い欣喜雀躍するなど。パーツがばらばらになっていてリボンで繋がっているとてもかわいいヤツ。好きなお洋服と似合うお洋服が違うということは往々にありまして、しかしそれに気付いていないのかあえてシカトを決め込んでいるのか分かりませんが勿体無いナァと思う人が世の中にはたくさんいますね。
わたしは好きなお洋服が大抵似合いますので、こういうときだけ背が高くてよかったなと思う。
本と服食って生きてるよ。サバイブ。トライブ。ネバエバダイ。


2016年3月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:3080ページ
ナイス数:84ナイス

書楼弔堂 破暁書楼弔堂 破暁感想
江戸から東京へと移ろいゆく混沌とした時代に生きる迷い人に、大量の蔵書(曰く、墓)から一冊の道標となる本を差し出す店主。本を弔うから、弔堂。世界観がドストライクなのは言うまでもなく、史実と虚構がうまくリンクしているところも大変興味深い。他の京極作品とオーバークロスしている部分もあり、思わず口が緩む。読まれぬ本は紙屑だが、読めば本は宝となる。宝と為すか塵芥と為すかは人次第だと店主は言い、自分にとって至高の一冊を見つけるために本を読み続ける。わたしの一冊は、多分まだ見つかっていない。
読了日:3月1日 著者:京極夏彦

ハサミ男 (講談社文庫)ハサミ男 (講談社文庫)感想
何度読んでも見事で鮮やかなトリック。無論ネタバレ厳禁。綺麗に纏められていて小気味良い。淡々とした語り口や曖昧なのに繊細な描写は勿論、随所に散りばめられたミステリーネタがツボ。シリアルキラーに限らず犯罪者の内面を世間は掘り下げがちだけれど、自分自身もよく分かっていない深層心理を憶測で断定することで安心を得るというのは如何なものかしら。何を持って安心できるのかも分からないし、仮にその憶測が当たっていたとして何を意味するのだろう。勝手に分析され見当外れな答えを出されるなんてたまったものじゃない、と思うのだけど。
読了日:3月10日 著者:殊能将之

言葉使い師 (ハヤカワ文庫 JA 173)言葉使い師 (ハヤカワ文庫 JA 173)感想
言葉は世界を混乱に導き崩壊させる危険な力を持つという理由で、言葉を使うこと、会話や記述を禁止された世界を「言葉」で書いた表題作『言葉使い師』。言葉は質量を持たないが、脳内に取り込んだ途端に独自の回路を生み出し、世界と自分の関わりを変えてしまう可能性を秘めている。これを防ぐために人々は、決して嘘をつけないテレパスを使う。ああ神林長平の言語に対する感覚やアプローチが好きだとしみじみ思う。表題作以外だとSFとの親和性が高いイルカが出てくる『イルカの森』が好みで、これの長編を読みたいと思った。
読了日:3月11日 著者:神林長平

風通しよいように… (1983年)風通しよいように… (1983年)感想
「永遠の少女」たる矢川澄子のエッセイ集。日常を綴ったものが取り纏められており、その話題は黄金の幼年期と70年代以降が中心となっている。その間に起きたことは多分意図的に外されており、その期間がいかに大切だったかが窺い知れる。わたしなんかには神性ささえ感じてしまう程に。彼女に強い憧れと尊敬を抱く余り美化し過ぎてしまう面もあるが、母なる大地に属さぬ少女を「美のためには食を拒んで死ぬことさえできる、おそるべき精神主義者たち。その文法がそう易々と他人に解けてたまるものか。」と綴る彼女に美しき孤独を感じてならない。
読了日:3月12日 著者:矢川澄子

丘の屋敷 (創元推理文庫 F シ 5-1)丘の屋敷 (創元推理文庫 F シ 5-1)感想
静寂に包まれた屋敷はある種の完璧な存在として丘の上に佇んでいるが、不気味の谷にも似た些細な違和感がありじわじわと背筋を冷やしていく。静かに狂っていくエレーナの描写や病的なまでの支配欲を持つ「父」の存在など、読者の想像力を掻き立てる悪意や恐怖が詰め込まれておりこれに同調してしまうと丘の屋敷に取り込まれてしまう。帰る家が無い彼女は最後、本当に幸せだったのだろうか?
読了日:3月14日 著者:シャーリイ・ジャクスン

傀儡后 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)傀儡后 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)感想
皮膚とは己と世界の境界線、または本質、または傀儡。この場合の皮膚とは額面通りの場合もあるが、自分が皮膚だと思っている範囲にまで広がるときもある。本書に出てくる視覚や聴覚といった五感が内を破り拡大し、己を世界へと偏在させるドラッグ「ネイキッド・スキン」も、街や風景をテキストとして街を認識する能力「街読み」も、〈皮膚〉という殻を破り、自己を世界へと拡張する表現である。まさに皮膚小説。わたしはわたしの為に服を身に纏う。装飾を施し、着飾る。それは時に戦闘服であり、武装であり、全てを身に付けたときわたしは完成する。
読了日:3月19日 著者:牧野修

中島らも短篇小説コレクション: 美しい手 (ちくま文庫)中島らも短篇小説コレクション: 美しい手 (ちくま文庫)感想
本書の何が凄いかというと、まさに珠玉としか言い表せない未発表作品が2篇も収録されているところ。言葉の選び方から行間まで細部にわたって本当に美しい「美しい手」は勿論、様々な〈青〉を言葉巧みに売る「"青"を売るお店」はある種のファンタジーであるのに唐突に真理を突いてくるので油断できない。この一冊を読んだだけで中島らもが如何にジャンルレスで多彩で多才だったのかが分かるだろう。「日の出通り商店街 いきいきデー」なんてタイトルからは決して想像もできない世界が広がっていて、ああ、天才じゃん、って。
読了日:3月21日 著者:中島らも

100%月世界少年 (創元SF文庫)100%月世界少年 (創元SF文庫)感想
三色型色覚を持つ人類は通常3種類の錐体細胞を持ち、光のスペクトルの組み合わせによって色を、世界を、認識している。もしこの三原色に含まれない色〈第4の原色〉を見てしまったらどうなるか、脳が心がショートし、精神異常に陥ってしまう。人間が月に住むために強引に月を改造し、開拓していった過程で自然発生的に先天性の疾患として生まれたのが、この第4の原色が見えてしまうという月世界凶眼症だ。世界観もキャラクターもスピード感も抜群で繊細な描写が美しいだけに、続編ありきで明かされていない部分が多々あるのがもどかしい。
読了日:3月26日 著者:スティーヴン・タニー

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